モデルメモリの壁 3/4: 何を残し、何を捨てるのか
モデルと働く人たちの五つの段階、そして誰もがぶつかる壁(第3回)
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前回、私たちは答えを見つけた。モデルに欠けているものは引き出し、つまり記憶である。では、引き出しを付ければそれで終わりなのか。違う。間違って作られた引き出しは、ないほうがましなことさえある。
もっともよくある誤解はこうだ。「それなら全部保存すればいい」。すべての会話、すべての紙を漏れなく引き出しに押し込む。結果は悲惨だ。本当に必要な一枚を見つけるために引き出し全体を探さなければならないなら、それは机をもう一度紙でいっぱいにするのと同じである。最初に逃げ出した、あの崩れる机へ戻っているだけだ。保存はメモリではない。 よい引き出しには規律がある。
第一に、何を残すかを選ぶ。 会話のすべての文に記憶する価値があるわけではない。雑談は流し、決定、原則、文脈の転換点だけを残す。それも丸ごとではなく、意味の最小単位に分けて残す。一枚の大きな紙よりも、必要な断片だけを取り出せる小さなカードが複数あるほうがよい。
第二に、残したものを壊さない。 これがもっとも難しく、もっとも重要だ。一度書かれた記憶は、勝手に消したり、書き換えたり、順序を変えたりしてはいけない。昨日書いた決定が今日こっそり別の内容に変わっていたら、あなたはその引き出しを二度と信じられない。記憶の価値は正確さだけではなく、勝手に変わらないこと から生まれる。信頼できない記憶は記憶ではない。噂である。
第三に、必要な瞬間にその一枚だけを取り出す。 よい引き出しは、「いまこの作業に関係するもの」を正確に見つけて取り出す。関係のない紙を混ぜたり、無関係な信号で順位を揺らしたりしない。いま扱っている仕事に本当に似ている記憶だけを、静かに机の上へ戻す。
この三つを備えた引き出しが机の横に付くと、何が起きるのか。
机がいっぱいになっても、もう崩れない。古い紙は床に落ちるのではなく、引き出しに整理されて入り、必要なときに元の場所へ戻ってくる。昨日合意した原則が今日も生きている。先週の設計が今週の作業の前提になる。同じ場所を回ることが止まる。同じ地点を回る代わりに、プロジェクトはようやく 前へまっすぐ進み始める。
記憶喪失の天才が、昨日を覚えている天才になる。その違いは知能の違いではない。引き出し一つの違いだ。
ここまで来ると、自然な問いが生まれる。では、この引き出しを全員がそれぞれ自分の方式で作ったらどうなるのか。あるモデルで積み上げた記憶を、別のモデルへ持っていけないとしたらどうなるのか。ツールを変えた瞬間、引き出しごと消えてしまうとしたらどうなるのか。最終回では、記憶がぶつかる最後の壁、そしておそらく最大の壁について話す。